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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)3923号 決定 1957年4月15日

本籍

群馬県館林市大字館林二五二六番地

住居

同県沼田市一一一七番地

鉱業

筑比地一郎

明治四四年九月四日生

本籍並びに住居

群馬県沼田市八七六番地

菓子製造販売業

橘郁二郎

昭和二年一一月七日生

右被告人築比地一郎に対する貸金業等の取締に関する法律違反、横領、被告人橘郁二郎に対する貸金業等の取締に関する法律違反各被告事件について昭和三一年一〇月九日東京高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人築比地一郎の負担とする。

理由

被告人築比地一郎の上告趣意について。

貸金業等の取締に関する法律(以下単に旧法という)三条によれば、何人でも同条の届出をすれば自由に貸金業を行うことができるし、かつ、旧法五条違反の制裁は同法条違反の行為をした何人に対しても平等に適用せられるのであり、また、旧法施行時から出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(以下単に新法という)施行後に亘つて所論のように無届で闇金融を行つている者は、新法による届出を怠つた所為につき新法附則三項四項によつて所論の刑責に問はれるのみならず、旧法時代の行為についても新法附則一一条の規定により旧法五条違反の罪責を免れ得ないのであつて、所論のように、旧法施行時に貸金業を廃止した者に比し差別ある取扱を受けるのではない。従つて旧法五条およびその違反者を処罰する旧法罰則規定が憲法一四条に違反するとの主張は、その前提において失当であつて、適法な上告理由とならない。

また、論旨は、旧法五条およびその違反者を処罰する旧法罰則規定が憲法九七条に違反すると主張するけれども、単に基本的人権を侵害するというだけで具体的に如何なる基本的人権が侵害せられるかを指摘していないのであるから、適法な上告理由とならない。

その余の論旨は、事実誤認と量刑不当の主張を出でないものであつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人築比地一郎弁護人伊藤宣喜の上告趣意は量刑不当の主張であつて同四〇五条の上告理由に当らない。

被告人橘郁二郎の上告趣意は事実誤認の主張であつて同四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条(被告人築比地のみ)により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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